なぜ腎臓は悪くなる?

泉川病院 腎臓内科医師

前川 明洋

 腎臓は血管のかたまりでできています。血管に圧力を加えることで尿を作っています。コーヒーメーカーでコーヒーを作るときにろ過フィルターを通すようなイメージで考えていただければと思います。これに例えると、片方の腎臓には100万個、左右の腎臓で合わせて200万個のコーヒーメーカーのろ過フィルターが存在し、そのフィルターを詳しくみてみると3層構造になっています。一番内側の層は血管の内側の内皮細胞で作られた壁、真ん中の層には基底膜という膜、一番外側には上皮細胞でできた壁があります。この3層構造をすり抜けることができるものは、より小さい物質に限られます。

 ただし、そこに血圧が高いなどの理由でフィルターに圧力をかけすぎると、フィルターの構造が壊れていきます。また、血糖が高いと、血管の内側から時間をかけてろ過の仕組みが壊れ、普段は漏れないはずの大きい物質であるたんぱく質などが尿中へ漏れてしまう現象が起きたりします。

 腎臓は血管のかたまりなので、動脈硬化をきたすような糖尿病、高血圧症、高尿酸血症などの疾患は、腎臓の血管を痛めて、腎不全の強いリスクファクターになります。また、たばこも強い動脈硬化因子であることが分かっています。リスクファクターは多ければ多いほど、動脈硬化が進展するスピードが速くなり、腎機能障害の速度は速くなります。禁煙、血圧、血糖、尿酸の管理などをしっかり行い、一つでも減らすことが重要です。特に糖尿病に関しては、食事療法や運動療法を頑張っても改善がみられない場合は、早めに内服の調整を行い管理目標値に到達した方が、後々の医療費削減や生活の質の保持につながることがデータとして示されています。

 これまで腎機能を徐々に悪くさせるリスクファクターに関してお話をしましたが、病気や喫煙以外でも腎機能を悪くさせる原因があります。痛み止めや市販の風邪薬の一部は、持病に慢性腎不全がある人や、また持病がなくても脱水状態で内服をすると、高い確率で腎機能障害を引き起こします。そのほかにも、漢方薬やサプリメントでも腎機能障害を起こすことは少なくないため、自己判断で市販薬などを継続的に飲み続けることは腎機能を悪化させる危険性があり、気をつけることも必要です。

 

※リスクファクター:ある特定の疾病を発生させる確率を高めると考えられる要素

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