腎臓のしくみ

泉川病院 腎臓内科医師

前川 明洋

 腎臓は3億年前に生物が陸上へ進出するとともに発達してきました。海水中と違い、塩のない陸上でも体液を保つために発達してきたといわれています。そら豆のような形をした大人の握りこぶし大の臓器で、腰のやや上に背骨をはさんで左右1つずつあります。1つの腎臓には、血液をろ過して尿をつくる装置、「糸球体」が約100万個あります。そこでろ過されたものが尿のもと(原尿)となり、尿細管という管を通過します。尿細管で水、塩分、糖、アミノ酸など必要なものを血管内へ再吸収し、体内の水などのバランスを調節した上で、1日に1ℓ~1.5ℓ程度の尿がつくられています。

 驚くべきことに、尿のもととなる原尿は、糸球体で一日に150ℓもつくられます。150ℓといったら、お風呂一杯分に相当する量で、実際に尿がそれだけ体外に出てしまうと人はあっという間に脱水症状になってしまいます。そこで、尿細管という場所で原尿を99%再吸収します。ここで再吸収の量を微調整することで、体内の水分や電解質(イオン)が一定のバランスとなるように調整されているのです。
 腎臓は、尿をつくる以外にも、以下のようにさまざまな働きを担っています。

●赤血球をつくるホルモンを分泌(貧血にならないように調整する)

●血圧を調整するホルモンの分泌

●酸アルカリ性のバランス調整

●カルシウムやリンなどのバランスを調整し、骨や全身の血管を健康に保つ

●尿酸の排泄

などです。腎臓は他の臓器との関連が非常に強く、体の中でも重要な臓器の一つだということが分かると思います。

 健康なときは多少塩分を取りすぎても尿に塩分を排泄してくれるので、血圧上昇や浮腫などは来しませんが、腎臓に問題が出てくると少しの不摂生が命に直結してくることは稀ではありません。

 将来、腎臓病になりやすいかどうかは、採血(腎機能 がわかります)や尿検査(蛋白尿の有無の評価をします)、 血圧などで簡単に予測することができるので、一度健診や医療機関への受診をお勧めします。

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