泉川病院 院長 泉川卓也先生 著(南島原市広報「南島原」2019年11月号掲載分)
泉川病院 院長
泉川 卓也
インスリン抵抗性が糖尿病やメタボリックシンドロームの原因に!
「肥満」や「やせ」の違いは、身長と体重で計算する「BMI」を指標に判定されます。日本では「BMI:25以上」が肥満の基準となっていますが、BMI:25未満でも、糖尿病などの生活習慣病(代謝異常)にかかる危険性が高いことが明らかになりつつあります。
インスリン抵抗性とは?
「インスリン抵抗性」とは、主に肥満や内臓脂肪の蓄積によって、インスリン(膵臓からでる血糖を下げるホルモン)の効果が低下した状態を指し、糖尿病だけでなく、メタボリックシンドロームの原因になるといわれています。脂肪の多くは皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えらますが、別の場所(異所)にも蓄積されます。そのような脂肪を「異所性脂肪」と呼びます。肝臓に脂肪が蓄積されると脂肪肝、骨格筋に蓄積されると脂肪筋と呼ばれ、異所性脂肪でもインスリン抵抗性が生じると考えられます。脂肪の蓄積によりインスリン抵抗性が強くなりますが、脂肪の少ない非肥満者に、なぜインスリン抵抗性が出現するのでしょうか?
ある研究ではBMIが23~25の非肥満者で心血管疾患(※)リスク因子(高血糖、脂質異常症、高血圧のいずれか)を持ってない人はインスリン抵抗性を認めませんでしたが、心血管疾患リスク因子を1つでも持っていると骨格筋(脂肪筋)のインスリン抵抗性を認めました。
肥満ではなくても、心血管疾患リスク因子を持っていると、肥満者のメタボリックシンドロームと同様に動脈硬化が進行してしまいます。定期的に健診を受け、肥満・非肥満関係なく身体の現状を把握する事が大事なことです。
※ 心血管疾患:動脈硬化によって血管の内側が狭くなり、臓器へ酸素を運ぶ血液の供給が不足して起こる疾患です。代表的なものに、脳梗塞や心筋梗塞・狭心症などがあります。
図1 肥満者、非肥満者の特徴と共通すること
※ 血中アディポネクチン:インスリンを効きやすくするホルモン。動脈硬化を抑制する。