哲翁病院 副院長 哲翁和博 著
南島原市広報「南島原」2014年9月号掲載分
インスリンの分泌には2種類あります。1つは、人間が生きるために必要な、一日中少しずつ出ている基礎分泌「生きるためのインスリン」です。もう1つは、食事やおやつなどを食べた後にたくさん出る追加分泌、血糖を上げすぎないために必要なもの、つまり「健康のためのインスリン」です。
生きるためのインスリンは、どんな人にも同じように必要で、健康のためのインスリンは、食事で糖をたくさん取る人ほど多く必要になります。糖を取り過ぎるとインスリンを分泌する唯一の臓器である膵臓のランゲルハンス島β細胞が働きすぎて疲労し、分泌が低下するのです。運動は筋肉が働き、エネルギーを使うことにより血糖を上げにくくし、インスリンを節約します。インスリンの分泌量は、過食、運動不足に加え体質も影響します。アジア人は、欧米人よりインスリンの分泌量が少ないのです。さらに、糖尿病になりやすい家系があり、この体質は遺伝します。ただし間違えてはいけないのは、糖尿病という病気が遺伝するのではなく、あくまでも糖尿病になりやすい体質が遺伝するだけで、食事内容や運動に問題がなければ発病するわけではありません。この体質を知るためにも健診が必要なのです。